MRエラストグラフィ

 「肝硬変」とは、線維によって肝臓の組織が破壊され肝臓が硬くなった状態のことです。肝硬変が進行すると、やがて肝臓は機能しなくなります。原因はC型肝炎やアルコール性肝炎を初めとする慢性肝疾患です。慢性肝疾患の肝臓内には弱い炎症が継続しており、この炎症が肝臓内に徐々に線維化を引き起こします。

 肝臓の線維化を診断するため、肝臓に針を刺して組織を採取する肝生検が一般に行われています。この方法は正確です。しかし針を刺す以上、まれではありますが合併症のリスクが避けられません。近年、MRIを利用して肝臓の硬さを測定する方法(MRエラストグラフィ)が開発され研究が進められています。その原理は次の通り。胸部に当てたプラスチックの板が振動し肝臓を振動させます。その振動に合わせて(同期させて)MRIを撮像することで、肝臓内を通過する振動波(弾性波)を可視化することができます1-2。物体を通過する振動波の波長と物体の硬さは相関関係にあり、密度を仮定することで物体の硬さを定量することができるのです。

 山梨大学では日本で最初にMRエラストグラフィを臨床MR装置に導入しました。それ以来、この分野では最先端の研究を続けています。今までの研究で、MRエラストグラフィを用いることで非常に高い感度・特異度で肝の線維化を診断できることが示されました3。現在もMRエラストグラフィを用いた複数の基礎研究・臨床研究が進行中です。

  1. 本杉宇太郎(2014).MRエラストグラフィ,荒木力編「腹部のMRI第3版」メディカルサイエンスインターナショナル.
  2. 荒木力(2011).「エラストグラフィ徹底解説-生体の硬さを画像化する」秀潤社.
  3. Ichikawa S, et al. Magnetic Resonance Elastography for Staging Liver Fibrosis in Chronic Hepatitis C. Magn Reson Med Sci. 2013; 11: 291-97.

MRエラストグラフィ
肝臓の硬さをずり弾性率で表すと正常では2 kPa前後です。肝硬変になると、平均5kPa程度まで硬さが上昇します。